研究概要 |
黒部川においては,2001年より出し平ダム・宇奈月ダムによる連携排砂が実施されている.ダム貯水池の堆砂対策としてのフラッシング排砂は最も経済的な手法の一つであり,流砂系の土砂管理の観点からの下流河川への本格的な土砂供給も期待される.一方で,短時間に貯水池から大量の土砂が排出されるために,下流域の生物相の受容度を考慮しなければ環境被害が発生する可能性がある. 本研究は,このような背景のもと,ダム排砂時に発生する高濃度濁水の発生機構と,このような高濃度の濁水が流れた場合の水質変化および生態系への影響評価手法に関する検討を行ったものである. 研究対象としたのは,以下の項目である. 1)ダム貯水池における微細粒子の流入・堆積過程とダム排砂時における高濃度濁水の発生機構 宇奈月ダム貯水池内にセジメントトラップを設置し,ダム湖に流入・堆積する微細土砂について,粒度分布や有機炭素濃度,酸化鉄濃度などの水質変化に影響を及ぼす物質の含有量について,月ごとに分析を行い,湖底堆積物や排砂時の採水試料との比較分析を行った.さらに,3Dレーザスキャナを用いて,排砂時の侵食を受ける堆積土砂面と水面が混在した状態の3次元プロファイル計測を実施するとともに,VTR画像を用いたPIV計測により貯水池内の流速計測を行い,ダム貯水池の水位変化と堆積土砂の侵食形態,また,これらに関係するパラメータ(排砂流量,底面せん断力,貯水位低下速度など)の関係を検討した. 2)ダム排砂による水質変化が生態系に及ぼす影響の評価手法 排砂流量と貯水位低下速度によって,ダム排砂操作のどの段階で,どの程度の高濃度濁水が,どの程度の時間継続するか,さらにこれに伴うDO低下などの水質変化がどの程度生じるかについて検討を行った.また,DO, SSおよびその粒度分布に着目して,このような水質変化が生態系に及ぼす影響を評価する手法について提案を行った.
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