研究概要 |
本研究の主な研究テーマは,1)未観測域での水文量の予測と,2)GCM等から得られる解像度の粗いデータのダウンスケーリングである.まず,1)に関し,地域水文量頻度解析(地域総合化)という手法を用いて,降水量や河川流量の,(データのない地域での)予測ができるかどうかを検討した.結果として,日本においても,この手法が充分な精度で,予測手法として用いられる可能性があることとを示した.欧米では,この手法の研究が昔から精力的になされ,非常に進んでいるが,我が国では,一部の研究者以外にはほとんど知られていない手法で,今まで,我が国のデータを用いた研究は,ほとんどなかった.我々のグループでは,まず,総説として,今までの欧米の研究状況を学会誌で解説し,それに加え,我が国独自の手法についての研究成果を発表した.2)については,時間的に解像度の粗い,気象庁から提供された,将来気候の計算データを用い,時間的スケールダウンをして,将来気候に関して何が結論付けられるかを検討した.その結果,将来の,非常に強い台風の増加傾向を示唆する結果を示すことができた.また,気象庁が一般に提供しているこのデータセットを用いた「温暖化予測」は,予測結果の検定がなされておらず,統計的な有意性が不明確である.我々のグループでは,Welchの検定手法を用い,このデータの有意性,つまり,将来(例えば100年後)に,温暖化によって気候が「有意に変化するかどうか」を示した. なお,1)に関し,L-momentを用いた,降水量の地域総合化に関する検討結果も得ており,この手法を用いて,河川計画における計画降雨算定に有効であるか否かを検討中であるが,この結果は,本報告書提出後に,論文として発表する予定である.
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