研究概要 |
(1)観測値の少ない流域内の気象・水文変量(降水量・河川流量など)を予測する手法として,地域頻度解析を用いる方法を検討した.この手法は,元々は,洪水流量を予測する手法であるが,降水量の予測にも用いることができる.本研究では,これに関し,以下の2つの成果を得た. A.20〜30年程度の降水量観測値から,120年確率程度の降水量(以下,○年確率降水量を「確率降水量」と称す)を予測した.九州中東部と三重県を対象として,効率的なIDFカーブ(降水量の強度,降水継続時間,頻度の関係式)の求め方を検討した.IDFカーブの適合度評価については,日本では従来,SLSCが良く用いられてきたが,本研究では,資料の数に応じた統計的手法(統計的検定)を検討した. B.上記の20〜30年程度のデータとして,アメダス雨量を用いたが,このデータは,観測点間の距離が,17km程度というものである.しかし,防災上,さらに高い解像度のデータが求められている.そこで,本手法では,アメダス観測点で求めたIDFカーブをアメダス観測点以外の近傍の地点の確率降水量予測に用いる手法を開発した.具体的には,最近10年ほどの,レーダーアメダス解析雨量を用いた. (2)観測地の少ない流域の洪水流量を,スケーリングを用いて予測する手法については,茨城県と栃木県に設けた水文観測所での観測を軌道に乗せ,データを収集したが,本報告書作成時に,解析は終わっていない.研究期間が終わったあとに,小松が中心となって継続的な解析を行い,結果を得るつもりである. (3)上記の確率降水量を洪水流量に変換するための降水-流出モデルを構築し,そのモデルを用いてスケーリング理論を発展させた.確率流量モデルのパイオニアといわれてきた,Eaglesonのモデルパラダイムの欠点を指摘し,その修正法を示した. このように,「未観測域での降水量予測」に関する充分な成果は得られたが,不確実性予測・評価については,期間内に研究が完了しなかった.
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