1.交通社会実験の全国調査 近年、交通の分野において社会実験の実施件数は急激に増加している。そこで社会実験が合意形成の促進などにどの程度寄与しているのか、どのような課題を抱えているのか、などを明らかにするために我が国の社会実験の事例をを可能な限り収集し、実施主体者に対してアンケート調査を実施した。 アンケート調査結果より、近年の社会実験の傾向として交通円滑化、公共交通の利用促進を目的としている社会実験が多く行われている。また、1999年度に社会実験の実施主体者に対して実施したアンケート調査結果と比較することで、社会実験を実施することが合意形成を促進する上で有効な手段であるという認識が高まってきたことが確認できた。近年の社会実験の抱える課題点を明らかにするために、本格実施に至った実験と至らなかった実験の要因を分析し、両者を比較した。その結果、施策の種類に関わらず交通政策の合意形成を促進するための手段として社会実験は有効であると認識されていることが確認できたが、社会実験で実施された施策を本格実施につなげるには、施策を継続的に実施できる予算や体制の確保が課題となっている。今後、社会実験で実施された施策を本格実施につなげていくためには、社会実験に対する支援のみならず本格実施に対しても支援を行うことで、本格実施をしやすい環境をつくる必要があるのではないかと考える。 2.交通シミュレーションと社会実験を組み入れた合意形成プロセスの提案 多くの住民参加型の計画策定手法による施策の実施において、交通シミュレーションを住民にわかりやすく説明し理解してもらうツールとして、交通社会実験を事業の必要性及び効果等を明確に示し変化を実感してもらう手法として用いられてきている。また、時間的・空間的・資金的・住民の合意といった制約により、一般的に対策のほとんどが段階的な整備により進められている。そこで、大宮氷川参道周辺地区まちづくりの取り組みの中で、段階的整備における「交通シミュレーション・社会実験・本格実施」サイクルの有効性を確認することを目的としている。 研究結果としては、交通シミュレーションの事前検討の場で住民へ説明する資料としての活用効果、交通社会実験時の交通調査から交通シミュレーション予測の結果の妥当性の確認、地域住民へのアンケート調査の結果から本格実施前に交通社会実験を用いることの必要性を確認することができ、「交通シミュレーション・交通社会実験・本格実施」サイクルの有効性を検証することができた。
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