研究概要 |
社会基盤施設の整備をとりまく状況は厳しく,一層のコスト縮減が求められていると同時に,高い耐震性や低い環境負荷などの性能要求もさらに強くなっている.そのような中で,整備事業については経済計算に基いて事業のもたらす便益と費用を明確に算定した評価を行なうことが定着しつつあり,設計段階でもライフサイクルコストを最小にする設計という考え方が明確に示されるようになってきた.また,世界的な動向である性能設計への移行も進みつつある.しかし,設計段階では経済計算の活用は限定的であり,また,実際には多くの誤解や混乱が生じるなどの問題点が見られる.本研究は以上のような施設設計の諸問題を経済計算の立場から体系的に検討して,事業評価で定着しつつある費用便益分析の考え方と整合した土木施設設計手法のプロトタイプを提示することを目的としている. 初年度(16年度)には従来からの伝統的な設計手法についてその基礎となる理論から実際的な設計手順にいたるまでの広範なサーベイと最近の性能設計に関する動向の調査を行なった.また,費用便益分析の経済計算の理論に従って供用寿命の最適設計問題を定式化して,上記の問題点を解決した設計手法を探った.様々な条件のもとでの最適供用寿命について比較検討し,その成果は国際研究集会で報告し,各国の専門家と議論を経ている.第2年度(17年度)にはサーベイした伝統的な設計手法と経済計算による最適設計の手法を比較検討し,設計手法の体系化を図る.また,設計に関する制度設計の例として,適切なリスク・責任分担を反映した設計業務の契約方式を作成することを試みる予定である.
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