研究概要 |
病原ウイルスに対して特異的吸着能力を有するタンパク質(ウイルス吸着タンパク質:Virus-Binding Protein, VBP)を活性汚泥中から分離し,このVBPを用いた水中病原ウイルス除去技術を開発することが本研究の目的である.本研究グループはこれまでの研究において,活性汚泥からポリオウイルス1型に対する親和性を有するVBPを分離し,さらに活性汚泥細菌からのVBP遺伝子の分離およびVBPクローニングを行うことに成功している.本年度は,担体表面上への配向固定化を目的としたリジンタグ付加VBP(LysTag-VBP)の創出を試み,以下に述べる成果を得た. まずVBPのC末端にポリリジンタグを導入したLysTag-VBPの遺伝子合成を試みた.ポリリジンタグ導入用のプライマーを独自に設計し、PCR反応によりLysTag-VBP遺伝子を創出した.LysTag-VBP遺伝子の創出に至るまでには,リジンをコードするコドンを2つ連続させた領域を有するプライマーを3組設計し,3段階に分けてPCRを行った.このLysTag-VBP遺伝子を組み込んだプラスミドpRSETを大腸菌に導入して培養したところ,IPTGによる発現誘導下においてLysTag-VBPを効率的に合成することに成功した.大腸菌を破砕し,ニッケルカラムでLysTag-VBPを精製した後,このLysTag-VBPが確かにウイルス吸着能力を有することをELISAにより確認した.さらに,グルタルアルデヒドを架橋剤として用いた固定化手法を用いてガラスビーズ表面上にLysTag-VBPを固定化し,固定化されたLysTag-VBPを用いてPV1吸着実験を行ったところ,固定化LysTag-VBPとPV1型間の結合が親和性の高いものであることが確認された.
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