研究概要 |
ウイルス吸着タンパク質(Virus-Binding Protein : VBP)は本研究グループが活性汚泥中から分離することに成功した水中病原ウイルスに対する吸着親和性の高いタンパク質であるが,このVBPを用いた下水処理水からの病原ウイルス除去技術を開発することが本研究の目的である.平成16年度では,VBPの配向固定化を実現するために,C末端側にリジンタグが付加されたVBP,リジンタグVBP(Lysine-tagged VBP : LysTagVBP)の合成を試み,成功した.本年度においては,LysTagVBPをウイルス吸着材として用いるために必要なLysTagVBP大量合成システムの構築を試みた. LysTagVBP発現系のスケールアップでは,まず1Lの大腸菌培養槽を用いることで,従来と同じ時間内で10倍量の菌体を得る事を可能にした.スケールアップ前と比べて菌体当たりのLysTagVBP発現量には差がないことをSDS-PAGEにより確認した.また,従来の6倍容量を有する自作ニッケルカラムを作成し,LysTagVBP精製に関して約6倍のスケールアップに成功した.精製後のLysTagVBPのウイルス吸着活性を確認するために,タンパク質のリジン残基を固定化する事が可能なゲルにLysTagVBPを固定化して,ポリオウイルス吸着実験を行った.その結果,固定化したポリオウイルス抗体と同等の吸着活性が確認された.以上の結果から,LysTagVBPがウイルス除去技術におけるウイルス吸着材として有効利用できることを示す事に成功したと言える.
|