研究概要 |
ウイルス吸着タンパク質(Virus-Binding Protein : VBP)は研究代表者が活性汚泥中から分離することに成功した水中病原ウイルスに対する吸着親和性の高いタンパク質である.このVBPを用いた全く新しい水中病原ウイルス除去技術を開発することが本研究の目的である.研究初年度及び次年度では,VBPの大量合成・抽出及び精製システムの構築を実現するため,大腸菌破砕法の検討及びVBP精製におけるアフィニティクロマトグラフィのスケールアップを行った.さらに,リジンタグを付加したリジンタグ付きVBP(LysTagVBP)の創出を行った.研究最終年度である18年度においては,大量合成したLysTagVBPを固定化したウイルス除去カラムの作成及びウイルス除去能を確認する実験を行い,以下に示す成果を得た. VBP固定化担体を用いたカラム実験では,実験開始1時間後に約40%のウイルス除去が確認され,さらに3時間後には70%のウイルス除去が確認された.さらに,LysTagVBP固定化担体を用いたカラム実験においても同様な結果を得た.このウイルス除去性能はカラム内の流速に依存しており,低流速での運転時ほど高いウイルス除去効率が確認された.このことは,サンプル水の流れが担体表面におけるVBPへのウイルス吸着に強い影響を与えることを示している.VBPを利用した水中ウイルス除去技術開発は全く新しい試みであり,本研究を通じて得られたVBPの利用に関する有用な知見は,VBPを用いた水中病原ウイルス除去技術の実用化に加えてVBPに関する今後の研究の発展を促す礎になると考えられる.
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