研究概要 |
ウイルス吸着タンパク質(Virus-Binding Protein : VBP)は研究代表者が活性汚泥中から分離することに成功した水中病原ウイルスに対する吸着親和性の高いタンパク質である.このVBPを用いた全く新しい水中病原ウイルス除去技術を開発することが本研究の目的である.平成16年度からの3年間において,以下に示す成果を得た. まず研究初年度においては,VBPの大量合成・抽出及び精製システムの構築を実現するため,大腸菌破砕法の検討及びVBP精製におけるアフィニティクロマトグラフィのスケールアップに成功した.VBPをウイルス吸着材として用いるためには大量のVBPが必要となる事から,VBP生産工程全般のスケールアップは本研究において非常に重要であった. 研究次年度では,VBPの配向固定化を実現するために,リジンタグを付加したリジンタグ付きVBP (LysTagVBP)の創出を行った.VBPの固定化の際にはタンパク質分子中のリジン残基を利用したが,その固定化位置を揃えるために,VBPのC末端にリジンが6残基連なったタグを挿入したものである.このことから,VBP固定化を効率的に行うことが可能となった. 研究最終年度においては,大量合成したLysTagVBPを固定化したウイルス除去カラムの作成及びウイルス除去能を確認する実験を行った.その結果,VBP固定化担体を用いたカラム実験では,実験開始1時間後に約40%のウイルス除去が確認され,さらに3時間後には70%のウイルス除去が確認された.VBPを利用した水中ウイルス除去技術開発は全く新しい試みであり,本研究を通じて得られたVBPの利用に関する有用な知見は,VBPを用いた水中病原ウイルス除去技術の実用化に加えてVBPに関する今後の研究の発展を促す礎になると考えられる.
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