研究課題/領域番号 |
16360263
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 宏明 京都大学, 工学研究科, 教授 (70344017)
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研究分担者 |
藤井 滋穂 京都大学, 工学研究科, 教授 (10135535)
越川 博元 京都大学, 工学研究科, 講師 (70273480)
高田 秀重 東京農工大学, 理学部, 助教授 (70187970)
鈴木 穣 (独)土木研究所, 水循環研究グループ, 上席研究員 (20231376)
小森 行也 (独)土木研究所, 水循環研究グループ, 主任研究員 (50355830)
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キーワード | 医薬品 / 抗生物質 / 水環境 / 下水道 / 生態影響 / LC / MS / MS / 藻類増殖阻害試験 / 下水処理 |
研究概要 |
1.医薬品(PPCP)のプライオリティー付けと調査対象物質の検討 内外の文献情報を整理し、検討した結果、最も重要な医薬品として抗生物質を取り上げ、国内での売上実績、薬価、体内排泄率を考慮して、水環境への総排出量を推定した。この結果、クラリスロマイシン(CAM)、レボフロキサシン(LVFX)が国内での環境への排出量が多いという視点から重要であることが明らかとなった。 2.対象物質の分析方法の開発 固相カラムとLC/MS/MSを用いて、CAMおよびLVFXの水試料からの抽出法、定量方法を検討し、下水、下水処理水での検出下限、定量下限性、回収率を検討した。 3.対象物質の下水濃度の推定と実態の把握 CAMおよびLVFXの下水の存在濃度を推定し、下水および下水処理水(活性汚泥法)の存在濃度を3箇所の下水処理場で調査を行って、実態を明らかにした。流入濃度は推定値と測定値に比較的良い一致が見られた。 4.対象物質の下水道での除去特性の検討 対象物質の流入、処理過程での水質、下水処理水質から、下水処理場での処理過程での除去特性を把握した。この結果、CAM, LVFXとも最初沈殿池でやや除去されるが、生物処理での除去率は大きくなく、また塩素やUVでの消毒過程ではほとんど変化はなかった。また処理過程の中では、一旦濃度の増加が見られる場合があった。 下水処理場の活性汚泥を用いて、人工下水とCAM, LVFXを添加した回分式で分解実験をおこなった。この結果、初期吸着が見られた後、濃度が低下したが、その速度はきわめて遅かった。 5.対象物質の生物への影響評価方法の検討 対象物質を、緑藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の増殖阻害試験(96hr)を用いて生物影響の濃度依存性を検討した。この結果、CAMのEC50は、LVFXのEC50よりも2桁程度毒性が高かった。また、実測された下水処理水濃度と、CAM, LVFXの毒性を比べると、影響が認められない結果となったが、CAMではその比率は小さく、他の生物の感受性の相違を考慮すると、さらに詳細な生態リスクの検討が必要であると考えられた。
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