研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである。 1)カワスナガニ現地調査:平成16年5/15〜5/21,7/14〜7/20,9/25〜9/30,11/10〜11/13,および平成17年1/21〜1/25の計5回実施した.これまでの調査同様カワスナガニは主に4.4km〜6.4kmに分布し,カワスナガニと生息場所が重複したカニの中でも,特にヒメヒライソモドキおよびタイワンヒライソモドキの2種と生息場所が重なる傾向が強いことが判明した. 2)幼生分布調査:平成16年7/19〜7/20,9/27に幼生分布調査を実施した.調査地点は,7月の調査では北川河口0km地点から2km,4km,6kmの3地点,9月の調査では北川河口0km地点から海域方向におよそ500mの地点とした.河川水中の上層に分布するゾエア幼生は少なく,中層や下層に多く分布していた.特に満潮〜下げ潮では,塩分躍層付近とみられる中層に多くのゾエア幼生が分布していた.これは感潮域に生息するプランクトンが塩分による選好性を持つとするLance(1962)の実験結果と一致する. 3)幼生生育試験:飼育水にに津屋崎沖の海水を砂濾過後,さらに0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し,蒸留水で塩分を調節したものを使用した.餌にはS型ワムシ,L型ワムシ,アルテミア幼生,アサリ,白身魚をそれぞれの実験条件に基づき与えた.室温は実験期間中を通して23〜25℃に保ち,蛍光灯による12時間サイクルの照明を施した.その結果,第6齢まで飼育することに成功した。 4)ゾエア幼生分散シミュレーション:北川感潮域における水理モデルを用いて,Lagrange的手法によりゾエア幼生の分散シミュレーシゴンを試みた.ゾエアの浮遊・沈降過程はStokesの沈降速度式で表現できるものとし,移流・沈降速度に加えて日周運動として12時間周期での鉛直方向の運動も考慮した.また,ゾエア幼生の塩分による選好性を考慮するため,ゾエア幼生が移動可能な塩分領域を設定した.その結果,塩分選好性があれば海域に流出しないことが判明した。
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