研究概要 |
本年度は、鉄筋コンクリート(RC)造柱梁フレーム内に煉瓦ブロック組積壁が充填された耐震部分架構を対象として、その耐震性能について実験的に検討した。使用した組積造壁の素材には、昨年と同様の有孔溝付き煉瓦ブロック(寸法=100×60×210mm^3)を用いた。 試験体は、1スパン1層のRC柱梁フレーム内に、上記の煉瓦ブロックを15段8列に芋目地状に積んだ壁パネル(縦1.05mx横1.75m、実大構造の約1/3縮小モデル)を基準試験体として作製し、3層建の1階を想定した定軸圧加力に曲げせん断繰返し水平加力を行った。柱幅は壁厚と同等(100mm)とし、組積壁には一切の補強を施していない。実験変数としては、基準試験体(無開口、シアスパン比=1.05)に対して、有開口(窓開口=0.56m×0.89m、ドア開口=0.45m×1.05m)と、柱内法間隔を0.87mに狭くしてシアスパン比を2.09とした、合計4体を制作した。 加力実験の結果、耐震性能に関して以下の事項を明らかにした。 1)RC枠組無補強組積造壁のせん断耐力は,既往の終局せん断耐力算定式により概ね推定できる。但し,壁圧縮強度や反曲点高さの取り扱いに不明な点がある。正加力時に比べて負加力時は、水平目地亀裂の共有化に伴って最大耐力が大幅に低下するが、その推定方法には更なる検討を要する。 2)窓およびドア開口部の面積が等しい場合には,その形状の違いが最大耐力に与える影響は小さい。また無補強の組積造袖壁は、開口端側に押し出され,終局耐力時に水平力を負担しなくなる。 3)組積壁では,正負加力時で壁水平目地亀裂を共有するために、正加力時と負加力時の履歴曲線および包絡線は一致しない傾向がある。特に最大耐力発生時付近での相違は大きい。 最後に、数値解析に関しては、目地挙動を模擬できる数値解析法の適否とその構成則について、文献的に検討を行った。
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