研究概要 |
本研究の目的は、地盤基礎構造物系の耐震性能評価手法の確立に必要な実証的研究を包括的に行い,特に非線形域における実用的な評価手法を提案することである。本研究計画では、これらを実在構造物での観測,既存建物の加力実験,相互作用系の地震応答解析などによってあきらかにする。昨年度は2004年10月23日に発生した新潟中越地震の余震観測により実効入力をあきらかにしたが,本年度の研究では杭基礎の損傷によって沈下した既存RC学校校舎の被害調査,余震観測および基礎梁の静的漸増載荷実験を行った。本実験では基礎梁および上部構造を中央で切出し,梁端間の相対変形を拡大させることによって構造物基礎根入れ部に外力を与えた。実験結果より実際の構造物において上部構造から伝達するせん断力による支持地盤の非線形応答性状を吟味し,汎用性の高いN値のみ用いた質点系モデルの解析結果と比較してその推定精度を検討した。最大余震の観測の結果を近傍自由地盤との記録を比較したところ周期0.15〜0.25秒付近において加速度応答スペクトルの比が大きく,杭基礎が損傷しEW方向のみに大きく非線形化していることがわかった。その後NS方向に静的漸増載荷した実験の剛性,耐力は極限地盤反力により杭近傍地盤の非線形性を考慮したWinkerばねモデルによる解析結果を大きく上回った。そこで基礎の前面土圧および摩擦抵抗力を加算すると大きく塑性化した変形領域において解析結果は概ね実験結果と一致した。これらの抵抗力の全体耐力に対する割合は50%以上であったが,一方で,実験結果の初期剛性は十分な精度では評価できなかった。以上により,小規模な低層構造物においては簡易な解析モデルで評価した実効入力は実際の入力を過小評価する可能性があることを実建物の実験および解析により示した。
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