研究概要 |
1980〜1981年に建設された平屋建て鉄骨建物2棟を対象に柱梁接合部の溶接品質をUT検査,外観検査とマクロ試験で調べ,また柱梁接合部の一部を切り出して動的載荷により変形能力を調べ,当時の鉄骨建物の品質と性能にっいて以下の知見を得た. (1)角形鋼管柱とH形鋼梁を帳しダイアフラム形式で接合する場合の溶接詳細として,開先加工,スカラップ加工,溶接詳細などの現在の標準と異なる詳細を確認した. (2)完全溶込み溶接のUT検査では,建物により欠陥数や合格率の平均が最大4倍ほど異なり,裏はつり形式の梁フランジは合格率が高いが,裏当て金形式の柱やパネルと帳しダイアフラムの溶接に欠陥が多く検出された.特に,初層のダイアフラム側,初層のフランジ側に多く,両者で全体の70%近くを占めた.欠陥の発生に対する技裏と溶接方法や管理技術の影響が改めて確認された. (3)マクロ試験の結旺から,溶接欠陥の種類によって発生する唖置と比率が異なる実態を示した.UT検査による欠陥検出率を比較した結旺,スラグ巻込み,融合不良,割れの欠陥の76%を検出することができた.また,鋼管柱の溶接部の検出率は表層よりも初層が1.8倍ほど高いなど,溶接部唖と欠陥唖置によりUT検査による検出率に差がみられた. (4)柱梁接合部を繰返し載荷した実験から接合詳細や溶接欠陥と,破壊性状や変形能力の関係を調べた.梁端溶接部が最危険断蔓のL形試験体では梁フランジの延性破断により破壊に至ったが,溶接欠陥がない場合は鋭角なスカラップ底からの亀裂が起点となり,また,溶接欠陥がある場合は欠陥の関与する唖置からの亀裂が起点となり,欠陥の有無と唖置により破壊過程と塑性変形能力が異なることを確認した.破断までの累積塑性変形倍率は14〜22で,現在の接合詳細による欠陥のない接合部よりも小さく,また欠陥による低下が認められた.最大塑性変形角は0.03rad程度であった.
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