| 研究概要 |
1.既存鉄骨造建物の溶接接合部の設計・施工プラクティスの類型化:高度成長期(1960年代後半から1970年代にかけて)に建設された超高層建物に採用されている大型断面の柱と梁の剛接合部を対象に,当時の接合形式を類型化して性能評価マトリクスを構築した.当時の技術者へのヒアリング調査や文献資料から,使用鋼材,接合部詳細設計,溶接施工管理の基準値などの情報を収集し,鉄骨工事技術の年代による変遷と品質の実態を調査した.
2.中低層鉄骨建物の現有耐震性能検証:前年度までに実施した,1980年初頭から中頃にかけて建設された低層鉄骨建物3棟の性能検証実験結果と,同じ鉄骨部分架構を現在の材料・施工により製作した試験体の実験結果と対比させ,溶接部の欠陥の存在により接合部の変形能力が受ける影響を定量的に明らかにした.特に梁フランジ溶接の始端部に欠陥が存在する場合に変形能力の低下が著しい点を示した.
3.大型断面柱梁接合部の現有性能検証実験:収集した大型断面柱梁接合部の中で高度成長期を代表する接合形式を選び,これを模擬する実大柱梁接合部試験体を製作してその構造性能を実験的に検証した。特に部材断面のプロポーション,接合要素技術,接合部の設計性能などの主要特性を反映させ,長周期地震動に対する応答を模した多数回繰返し載荷の条件における塑性変形能力と破壊特性を調べた.使用鋼材の引張試験,シャルピー衝撃試験,溶接部の外観検査,ヴィッカース硬さ試験,引張試験,シャルピー衝撃試験を実施し,鋼材性能と溶接施工詳細,溶接品質の情報を得て,当時の溶接詳細による接合部が保有する変形能力の実態を把握した.動的応答解析により長周期地震動を受ける超高層建物の変形に関する要求性能を調べ,実験結果と比較して初期超高層建物が長周期地震動を受けたときに被る損傷に対する安全性を検証した.
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