研究概要 |
コンクリート系構造骨組の柱梁接合部の破壊性状についての既往の知見を参考に,柱梁接合部の破壊機構を解明しやすいように工夫したRCおよびPC構造の平面部分架構試験体を用いた実験を行った.柱梁接合部のせん断伝達機構を解明するための影響因子として主筋の付着・定着性能,接合部横補強筋や周辺部材による拘束力,などが考えられる.そこでここでは一般的な配筋を有する基準試験体を基にして,(1)従来にない工夫をした配筋詳細によって梁主筋の付着・定着性能を顕在化させる試験体,(2)接合部内補強筋の役割を明確にする試験体,そして(3)接合部横補強筋による拘束効果の影響を検討する試験体,をそれぞれ作製して実験を実施した.具体的には,(1)については1)接合部内の梁主筋に沿った3カ所に定着ナットを溶接によって設置する,2)接合部内主筋の付着を絶縁するために鉄筋フシの一部を切削して平滑化する,の二通りとした.(2)については日本建築学会の靭性保証型耐震設計指針では,接合部内の横補強筋の機能として接合部コア・コンクリートの拘束効果が重要であることを述べ,接合部劣化型架構の変形性能改善への横補強筋の効果を指摘しているが,最小量として規定した0.3%には明確な根拠があるわけではない.そこで,要求すべき拘束性能を明確にするために加力方向と直交方向とに分けて接合部横補強筋のひずみを測定する方法を採用した.(3)については,柱梁接合部の形状が横長となる試験体を作製した. 試験体は実骨組を約半分に縮小した柱梁接合部を含む平面十字形部分架構全6体で、鉄筋コンクリート造3体、圧着接合タイプのプレキャスト・プレストレスト・コンクリート造3体とした.全試験体とも同一の断面として柱断面を350mm×350mm,梁断面を250mm×400mm,階高を2830mm,粱スパンを3200mmとした.柱梁接合部のせん断破壊を先行させる為に柱・梁主筋には高強度鉄筋を使用した.これらの試験体を用いた静的載荷実験を行い,その結果をもとに接合部内梁主筋の付着性状を考慮した接合部せん断力の制限,必要接合部横補強筋量の算出方法,接合部アスペクト比とせん断強度との関係などを検討した.
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