研究概要 |
1.公共空間の現場実態調査 神戸市,大阪市,京都市,札幌市において地下鉄駅構内の環境音を録音した.このうち,大阪市で録音した音源を詳細に分析した結果,利用客数と時間帯の影響は小さく,電車が発する騒音が駅構内の環境音の主な決定要素になっていることを明らかにした.改札階の騒音レベルは約70dBAでほぼ定常であった.ホーム階における騒音レベルは,電車が存在する場合は約75dBA,電車が存在しない場合は約65dBAであった.ただし,電車が存在する場合は騒音レベルの時間変動が大きく非定常な騒音であった、また,神戸市と京都市の地下鉄駅構内では,バイノーラルマイクを用いて騒音の録音を行った.この音源を用いて,音の空間特性と深く関連している両耳間相関度(ICC)を算出した.ICCの測定結果は拡散音場の理論値とほぼ一致していた.今後ICCを用いた騒音の空間特性の評価法について,聴感実験を行うことにより検討する. 2.実験室における聴感実験 騒音が存在する音場において「聴き取りにくさ」が最小になる最適音声レベルを明らかにするための基礎実験を行った.その結果,騒音レベルが55dBA以下であれば最適音声レベルは70dBA程度で一定であり,騒音レベルが55dBA以上の場合はSN比が15〜20dBとなる音声レベルが最適であることを明らかにした. 3.単語親密度に関するアンケート調査 基礎的な検討として単語親密度が世代によって異なるかどうかを明らかにするために,アンケート調査を幅広い世代を対象にして行った.その結果,世代が離れるに従って世代の違いによる親密度の差は大きくなる傾向がみられるが,親密度が特に高い単語については世代による親密度の差は小さいことを明らかにした.また,鉄道駅と百貨店における案内放送と非常放送を少ないサンプルではあるが収集し,用いられている単語の7割程度が高親密度単語であることを明らかにした.
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