研究概要 |
今年度は主として建物にかかる熱負荷の軽減に関する実験と,建物の周辺屋外環境における樹木の熱的効果に関する調査を行った。これらの要素は亜熱帯沖縄の住環境を考える上で非常に重要なものとして位置付けられる。建物にかかる熱負荷軽減については,低緯度における強い日射が最大の負荷要因となるので,これを低減するための遮熱装置に関する実験を行っている。大学の建物の屋上面を用いたいくつかの材料による表面温度の測定と,屋上面に設置された太陽電池による日射遮蔽効果に関する実測を行っている。それにより材料の違いによる表面温度の変化及びその室内への効果について,定量的な比較ができた。また,壁面の色彩が熱環境に与える影響について明らかにするため,コンクリート壁体にペイントされた色彩と表面温度の関係をサーモカメラにより測定した。その結果,色彩の明度と表面温度との負の相関が明らかになった。さらに,建物敷地などの周辺環境に関する調査として,生活環境整備の見地から樹木による屋敷囲いの戦後における変遷について明らかにするための調査を行った。調査地点は沖縄本島中北部の全90集落であり,戦後から復帰までの屋敷囲いの変化を航空写真から読み取った。1944年には多くの集落に屋敷林が見られたが,1972年には半減していた。また,特に有名な屋敷林として本部町備瀬集落の福木の屋敷囲いと住民意識の調査を行った。住民は福木を積極的に活用するというよりは現状維持の気持ちが強いことが明らかになった。さらに,街路樹が都市の熱環境に与える影響を明らかにするため,具志川市の5本の市道において一昼夜,サーモカメラによる熱環境の測定を行った。街路樹の樹種の違いによる熱的効果の違いについて明らかにしている。
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