今年度の研究の内容は大きく3つに分けられる。一つは沖縄の住宅の熱的性能に関する実測調査とその解析、もう一つは住宅の熱的性能を向上させる断熱手法の開発、さらに住宅周囲の植物による熱環境調整に関する調査である。 住宅の熱的性能に関する調査として、住宅内部に関しては主としてエネルギー使用量に関するデータの解析および居住空間の熱環境実測を行った。エネルギー使用量に関する実測はすでに終了しているが、その膨大なデータを解析する作業に取りかかり、沖縄の住宅におけるエネルギー消費の傾向を明らかにした。主な知見として、沖縄のエネルギー消費は夏と冬にピークを持つ双峰性を示すこと、冷房エネルギーは比較的小さく、給湯エネルギーが大きいことが明らかになった。居住域の熱環境実測として、10名の被験者に小型温湿度計を携行してもらい、室内外の温湿度を継続的に測定し、その時の温熱感覚も回答してもらった。この解析はまだ十分に進んでいないが、室内外の温度差、人体周囲の温度変化と温熱感覚の変化、季節的な温度および絶対湿度の変動などを中心にデータをまとめている。 住宅の断熱性能向上に関する研究としては、沖縄で問題となる強い日射の遮断法の開発を中心に研究を進めた。沖縄に多い陸屋根RC構造住宅の屋上面の遮熱を図る手段として、屋上緑化や断熱ペイント、自作の断熱材等の実体実験を行った。さらに日射を透過させる窓面の遮熱性能の向上を図るための遮熱ペイントの実験を行った。これらの結果の解析はまだ十分ではないが、冷房負荷軽減量の計算等を行い、窓面および屋上遮熱の有効性を確認している。 住宅周囲の熱環境調整に関する調査として、沖縄本島北部の屋敷林に関する歴史的な変遷を航空写真や聴き取り調査により明らかにしたことと、那覇市の新都心地区における街路樹による温熱環境緩和効果に関する予測を行った。なお、住宅の熱環境と市街地の熱環境に関する調査は、熱帯地域に属する東南アジアの国々でも行っている。
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