研究課題
基盤研究(B)
都市中間層の住宅条件がどのように再編されようとしているのか、を明らかにするために、住宅市場の動向に関する統計分析を実施したうえで、中間層へのアンケート調査を行い、とくに住宅履歴に関して考察し、フィルタリング・システムにおける「資源」配置と「梯子」設計に関する知見を得ようとした。その結果、以下のような結論を得た。(1)ポストバブルの住宅市場は住宅価格のデフレーションの進行、住宅政策の再編、企業による住宅福利厚生の縮小、などの特徴をもち、従来のようなフィルタリングを期待できない状況にあること、(2)中間層のアンケート調査からは、住宅履歴の内容が世代によって大きく異なり、フィルタリングにおける「梯子」の機能、「資源」配置を一律に論じることには無理があること、(3)すなわち、ベビーブーマーの世代は、住宅金融公庫、企業内での住宅福利厚生制度を利用して1980年代末までに持家を取得し、「梯子」を登り終えており、バブル崩壊の影響を大きくは受けず、現在に至るまで住宅所有を肯定的に評価する意識が高いこと、(4)これとは大きく異なり、ポスト・ベビーブーマーの世代は、持家を初めて購入した頃にバブル崩壊に見舞われ、住宅資産のデフレーションを経験していることから、将来の住宅取得についての計画を明確にもてず、住宅所有に対しても必ずしも肯定的な意識はもっていないこと、(5)世代が若くなるにしたがい、企業からの援助は減少しており、フィルタリングにおける伝統的な「資源」の恩恵が小さくなっていること、(6)若い世代では親の援助の有無、及び相続の可能性が住宅条件に与える影響が強まっており、したがって社会的な「資源」よりは家族「資源」のもつ意味が大きくなっていること、(7)このような傾向からすれば、中間層の住宅条件に影響する因子が社会因子から私的因子に移行すると考えられ、私的要因による住宅条件の格差発生が懸念されること。
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Housing and the Built Environment Vol.20, No.1(印刷中)
住宅土地経済 No.52
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住宅会議 第61号
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Paper for ASEF/Alliance Asia- Europe Annual Workshop
ページ: 1-23
「都市再生」と住環境政策(日本建築学会都市計画委員会)
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