研究課題
都市中間層の住宅条件がどのように再編されようとしているのか、を明らかにするために、昨年度に引き続き、住宅市場の動向に関する統計分析を続行し、中間層へのアンケート調査の結果に関して分析を深め、とくにフィルタリング・システムにおける「資源」配置と「梯子」設計に関する知見を得ようとした。また同時に、住宅政策の再編実態に関する資料を集め、その中間層への影響を分析した。その結果、以下のような結論を得た。(1)住宅履歴の内容がコーホートによって大きく異なることがわかった。とくにベビーブーマーとベビーバスターの差異に注目すると、前者はバブル経済のピークまでに住宅を購入し、その後の資産デフレは小幅であったのに対し、後者はバブル経済のピーク時に持家を取得し、大幅な資産デフレに見舞われている。(2)世代が若くなるほど、持家市場に参入する時期が遅れ、その背景には、雇用・所得の不安定化、単身者・未婚者の増加、初婚年齢の上昇、といった社会・経済条件の変化があることがわかった。「梯子」の構造はコーホートによって大きく異なっている。(3)住宅政策における重要な変化は住宅金融公庫の廃止である。若い世代は公庫融資を用いることがありえず、市場での資本供給を利用せざるをえない。また企業による持家取得援助も縮小傾向を示している。住宅取得を支える「資源」配分のあり方は大幅に変化した。(4)他方において、若いコーホートでは親の持家の相続可能性が高まっている。出生率の低下、親世代の持家率の高さなどが要因である。また親世代による生前贈与が子どもの持家取得のあり方に影響し始めている。(5)こうした点から、持家取得の「梯子」のための「資源」供給のシステムは、政府と企業社会を中心とするシステムから、市場と家族を基軸とするシステムに移行する途上にあると考えられる。
すべて 2005
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Journal of Housing and the Built Environment Vol.20 No.1
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