2004年度からの調査研究に引き続き、特別支援教育詳細調査として、2005年5月にノルウェーの調査を実施した。インクルーシヴ教育が推進されているノルウェーでは、肢体不自由養護学校の教室、トイレ、プール、更衣室のみならず、肢体不自由児が就学する小中学校においても、休憩室やトイレには天井走行式リフターが導入されていた。インクルーシヴ教育に対応する教育環境のデザインと天井走行リフターの設置・活用方法、住宅と学校のアダプテーション等について詳細な実態を把握できた。これらの調査から、学校における環境面からのアプローチが重要であることが示唆された。 ノルウェーの特別支援教育プログラムを参考に日本の養護学校における環境面からのアプローチを検討し、千葉県立桜ケ丘養護学校の教室とトイレに天井走行式リフターを導入し「抱っこによる移乗」の改善を試みた。その結果、授業時間にリフターを活用した重度重複障害児の自宅にリフターを設置し、自宅における環境改善と家族の介護負担の軽減が大きく図れた。このことは、児童の養護学校卒業後の自立生活に結びつける特別支援教育のあり方について方向付けを行う結果となった。一方、千葉県立袖ヶ浦養護学校では、寄宿舎にリフターを設置することで、介助者の安全性・身体的負担軽減に有効であった。また、浴室に設置したリフターは利用する児童にとって、入浴の楽しみと快適性を高めるQOLの向上につながった。 今後の課題としては、教諭を含めた、関連職種によるリフター適合・調整に関する支援体制整備と「個別の指導計画」の中に福祉用具活用を明確に位置づけていくことが挙げられた。また、ICF(国際生活機能分類)の視点から、養護学校、自宅生活、卒業後の自立生活を視野に入れた、環境面からの支援体制整備が重要と考えられる。
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