研究概要 |
本年度は、液体原料噴霧ECRプラズマMOCVD法によりチタニア膜の低温成膜をおこない、基板温度(T)、μ波出力(P)、基板-ノズル間距離(d)などの合成条件と得られた膜の結晶構造、微細組織、成膜速度および光触媒活性との関係を明らかにした。さらに電極膜として、Ir系およびRu系貴金属複酸化物膜の作製し、合成条件と電気的特性を調べ、最適電極条件を見いだした。これらのことをふまえ、本研究を総括した。 [1.チタン酸化物薄膜の合成]ECRプラズマMOCVD法で作製した膜は、熱CVD膜と比較に比べて、より低温で結晶性の良い膜が得られた。d=35mm、T=室温、P=900Wで、高分子樹脂(ポリアミドイミド:融点250℃)上へ結晶性アナターゼが成膜できることがわかった。 [2.光触媒活性評価]水銀ランプを用いたエタノール転化率により酸化チタン膜の光触媒活性を測定した。dが小さく、Tが高く、酸素-窒素比で酸素が多い時に光触媒活性が向上し、酸素:窒素=9:1、T=700℃、d=15mm、P=900Wでは触媒活性が最大の38%となることを明らかにした。また、酸素-アルゴン比1:1、T=700℃、d=55mm、P=900Wで合成した膜の転化率は30%と高い触媒活性を示した。この膜は組織が粒子状で表面積が大きく、アナターゼ中にカーボンを含むナノコンポジット膜であることがわかった。 [3.Ir系、Ru系貴金属複酸化物膜の合成と電極特性]電極としてIr系(IrO_2,SrRuO_3,BaRuO_3,CaRuO_3)、Ru系(RuO_2,SrRuO_3,BaRuO_3,CaRuO_3)複酸化物膜をMOCVDおよびレーザーアブレーションを用いての合成し、結晶構造、組織、組成と電気伝導特性との関係を評価し、最適電極特性を明らかにした。これらのチタニア膜および複酸化物電極膜が優れた特性を有することを見いだし研究を総括した。
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