研究概要 |
本研究は、我々が発見した原子サイズの局所的な加熱を可能にする新プロセス"サマリウム原子加熱法"およびその手法をさらに発展させた遷移金属原子加熱法を種々のガラス系に適用して結晶ラインパターニングをガラス基板上に作製し、さらに次世代機能デバイス素子に応用展開することを目的としたものであり、以下の成果が得られた。 1.SmO_3-Bi_2O_3-B_2O_3系ガラスにおいてレーザー走査方向を変えることにより、光非線形性を示す曲線状および分岐状結晶ラインを書き込むことに成功した。分岐状結晶ラインは屈曲前後においても同じ結晶方位を有し、屈曲点あるいは分岐点で顕著な光の散乱が観察されないことから、光導波路として機能することを明らかにした。また、結晶ラインの表面形態を観察した結果、結晶ラインの表面は非常にスムースであり、屈曲点あるいは分岐点においても顕著な構造の乱れがないことを明らかにした。 2.サマリウム原子加熱法に代わる新規な手法として遷移金属イオンを利用したレーザー誘起結晶化法を開発した。サマリウム原子加熱法と比較して、遷移金属イオンの含有量が1mo1%程度でもレーザー照射によって十分発熱し、様々な結晶ライン(例:LiNbO_3,Sr_<0.5>Ba_<0.5>Nb_2O_6,β'-Gd_2(MoO_4)_3,Ba_2TiGe_2O_8)創製に適用可能であることを実証した。 3.レーザー照射と化学エッチングの組合せによる新規な形態制御加工法を提案し、実際にBaO-TiO_2-GeO_2系ガラスにおいて数μm〜数十μmサイズの内径を持つマイクロチャンネルの創製が可能であることを実証した。この技術を結晶ラインへの電極形成に利用できることを提案した。 4.本研究を通じ、レーザー誘起原子加熱法を用いて次世代光導波路として展開可能な様々な光非線形性/強誘電性結晶のラインをガラス表面に書込むことに成功すると共に、材料創製の科学および工学分野に多大な貢献をした。
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