研究概要 |
本年度は、WC-Co系超硬合金チップからW及びCoを効率よく選択的に分離回収するための手法として、水熱酸化法による処理を検討した。処理溶媒に硝酸を用いることにより、チップからCoをイオンとして溶出させると共に、骨材粒子であるWCを酸化し、レモン色のWO_3沈殿として回収できることを明らかにした。しかしながら、WC粒径が小さく、Co含量の少ない超硬合金チップに関しては、耐酸化性が高いため、硝酸が十分な濃度存在したとしても完全に酸化物に転換することが出来なかった。この原因は、チップ表面にWO_3が徴密な膜を形成してしまうためである。水熱処理中にチップを取り出し、このチップ表面を覆う緻密な酸化膜を剥離させ、引き続き処理を行うことで、処理時間は格段に早くなった。すなわち、この結果は水熱処理と機械的な処理を組み合わせることにより、より高効率な資源回収を実現することを示している。また、この処理によりWCの粒径やCo含量によらず、Wを酸化物として、Coをイオンとして完全に分離した形で回収可能であることが明らかとなった。水熱条件下でボールミルを行うことにより、実用プロセスとして利用可能であろう。現在実用材料として利用されているさまざまな超硬工具には、耐酸化性のさらなる向上のため、Ta, Ti, V, Crなどの炭化物や被覆が施されている。本手法の有効性を明らかにするためには、これら実用材料への適用に関する検討を進める必要がある。平成17年度は、ここに示した実用化材料への展開を目指した検討を進める予定である。これにより、実用化への道が開けるものと考える。
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