前年度の超硬合金焼結体及び圧電性セラミックスからの有価金属の高効率回収実験に続いて、水熱メカノケミカル処理によるNd-Fe-B系希土類磁石からのNdの分離・回収実験を行った。試料には市販のNiめっきを施したNd_2Fe_<14>B磁石を用いて、本装置による通常の水熱処理及び水熱メカノケミカル処理の効果について比較検討を行い、それぞれの処理条件の最適化を図った。組成Nd_2Fe_<14>B(Fe:68wt%、Nd:28wt%、B:1wt%)のNiめっき被覆希土類磁石(5mmφ×3mm)をテフロン内張り耐圧容器中に種々の溶媒とともに封入し、処理温度100〜250℃で処理時間を変化させてNdの分離・回収実験を行う。溶媒にはHCl+(COOH)_2の混合溶液、H_2SO_4+NaClの混合溶液、H_2SO_4+エタノールの混合溶液の3種類について検討した。その結果、塩酸+シュウ酸の組み合わせにおいて最も高効率でNdを回収できることが明らかとなった。Ndを固体として回収した後に残る廃液に関しては、pH調整によりNi及びFeを水酸化物として除去した。最終的な廃液中に含まれるホウ素に関しては、当研究室で研究開発を進めている水酸化カルシウムを鉱化剤とした『水熱鉱化法』により、再利用可能な鉱物として回収できることを明らかにしている。したがって、このような熱水を利用した処理を行うことにより、希土類磁石に含まれるすべての元素をそれぞれ分離すると共に、再利用可能な形で回収できることが明らかとなった。
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