研究概要 |
酸化スズ(SnO_2)の高感度・高選択性ガスセンサ特性を開拓するため,温度と酸素分圧という2つの重要な因子を精確に取り入れた第一原理計算とパルスレーザー堆積法による薄膜合成および評価を行った. まず,SnO_2表面上の分子吸着シミュレーションを行った.第一原理PAW法によるスーパーセル計算により,酸素分子や水分子の吸着サイトおよびエネルギーを酸素分圧,水蒸気分圧,温度の関数として評価した.このような吸着シミュレーションをこれまでに予測した様々な表面構造について系統的に行った結果,吸着エネルギーは表画構造や雰囲気に大きく依存することが判明した.また,この計算結果に基づいてセンサ特性に適した表面構造を予測した. つぎに,さらに良好なセンサ特性を示す表面構造を探索するため,アナターゼ構造を有するSnO_2基酸化物の合成を目的とした成膜実験を行った.第一原理計算により,SnO_2のアナターゼ相は常温・常圧下で安定なルチル相に比べ非常に高いエネルギーを持つことが予測されたため,安定なアナターゼ相を有するTiO_2と固溶体化することによりSnO_2基アナターゼ相の安定化を試みた.パルスレーザー堆積装置を用いて,酸化物単結晶基板上に温度と酸素分圧を変数として様々な濃度比をもつSnO_2-TiO_2固溶体膜を形成させ,結晶構造および組成を詳細に調べた.その結果,TiO_2モル濃度80%以上でアナターゼ単相が生成された.また,チタン酸ストロンチウム基板を用いることにより,エピタキシャル成長した単結晶膜を合成可能であることが示された.
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