研究概要 |
青色発光ダイオード(LED)の高出力化、低価格化に伴い、これを用いた白色LEDの研究開発が進んでおり、蛍光灯などに取って代わる新たな高効率白色光源としての応用に期待が寄せられている。とりわけ発振波長405nmのGaN系LDは、次世代DVDの規格波長デバイスであることから今後の高性能化が期待される。本研究では、この紫LDを励起光源とした固体照明用新規蛍光体の開発と光物性評価を目的として研究を行った。まず3価の希土類イオンの中でも405nm帯に強い励起吸収帯を有するSm3+イオン蛍光体の4f電子遷移光物性に焦点をあてた。試料作成は、Sm2O_3をドープしたソーダ含有量の異なるホウ酸塩ガラス試料を作製した。これらの蛍光スペクトルを測定し、各バンドを4f電子準位間遷移に帰属した。次に、それぞれの試料において、密度、屈折率及び吸収断面積を測定し、Judd-Ofelt解析により、Sm3+イオンの配位子場のみに依存するΩt (t=2,4,6)パラメータを求めた。このパラメータと遷移前後の準位に依存する還元行列要素の値から、Sm3+イオンにおける任意の電気双極子遷移の確率が得られるので、発光の準位間遷移に対する輻射遷移確率η_<VIS>を算出し、測定した蛍光寿命τfの値から「可視域量子効率η_<VIS>」を算出した。更に、積分球を用いたLD励起蛍光スペクトル及び発光効率の測定によりη_<VIS>(実測値)を求め、先程のη_<VIS>(算出値)と比較検討し、それぞれの準位間遷移に対応するAJJ'の比と発光スペクトルのブランチ比についても比較検討した。また耐久性の優れた白色LEDの開発を目指して、粉末YAG : Ce蛍光体に代わる材料として、結晶化ガラス蛍光体の開発を行い、全光束測定を積分球を用いて行い、市販品と同等の照明効率を有することを確認し、特許出願を行った。以上、希土類含有蛍光体の作成と4f電子に基づく光物性の研究を系統的に行い、固体照明材料としての性能評価を、実験面と遷移確率についての理論面の双方から行った。
|