研究概要 |
本研究は強力な超音波を用いたソノケミカル反応により、炭素および関連したナノ構造材料を常温付近の液相にて合成しようとするものである。 (1)o-ジクロロベンゼン(o-DCB)等のベンゼン誘導体に対して超音波照射すると、ベンゼン環の重合により液体は数分で黄色く着色し、更に1時間程度の長時間照射を続けると黒い沈殿物が生じることが明らかになった。これは透過型電子顕微鏡により丸みを帯びたグラファイト相のナノ粒子であることが確認された。 (2)同様の超音波照射した試料の赤外吸収スペクトルより、メチル基およびメチレン基が明瞭に観測されたことから、超音波照射によりベンゼン環の開裂も生じていることが示された。 (3)洗浄漕型超音波照射装置の45,110,200kHz等の高周波照射では斯様なソノケミカル反応は明確に認められず、20kHzのホーン型超音波照射による大振幅振動のメカニカル作用が大きく寄与することを見出した。 (4)金属および無機化合物の固体粒子をこの反応に添加することで、重合過程は大きく促進されて得られたナノ粒子の形態が多様に変化することを見出した。Co,Niの同時添加では、繊維状粒子が生成した。これは電子線照射によって比較的容易に変形し、粘調な低分子ポリマーから紡糸的に生じたものと推定された。 (5)硝酸亜鉛の添加では中実、硝酸亜鉛と金属亜鉛の同時添加では中空のそれぞれ針状粒子が生じた。金属亜鉛単独添加では、酸化亜鉛の六角板状結晶が生成した。種々の対比実験を行った結果、空気中の酸素がo-DCB中に溶解し、金属亜鉛と反応しているものと推定された。この結晶成長は超音波強度が高すぎると妨げられ、適度な強度の超音波にて効果的に促進されることが示された。
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