研究概要 |
これまでに我々は、自己組織化能を有するオルガノアルコキシシラン単独の組織化により様々なメソ構造体の合成を報告し、焼成によるメソ多孔体にも成功した。本年度は、開裂可能なアルキニル基を導入した出発分子1Cn(CH3(CH2)n-3C≡CSi(OCH3)3;1Cn, n=10, 16)からメソ構造体を合成することで、焼成よりもソフトな有機除去による多孔体化を検討した。さらに、出発分子のアルキル炭素数の変化および出発分子に対するテトラメトキシシラン(TMOS)のモル比を変化させ、得られるメソ構造体の細孔パラメータの制御を試みた。1CnとTMOSをTMOS/1C16=6,9,12あるいはTMOS/1C10=3,6,9のモル比で混合し、共加水分解・縮重合により得られた固体を粉砕して粉末試料を得た。この試料をフッ化アンモニウム存在下、水/メタノール/THF混合溶液中で処理することで化学処理後試料を得た。TMOS/1C16=6とTMOS/1C10=3の系から得られた粉末試料はラメラ構造が共存するものの、全ての試料においてwormhole-like構造の形成をXRDおよびTEM観察から確認した。化学処理後もこの構造は保持し、焼成で有機を除去した試料よりも細孔径および細孔容積は大きな値を示した。一方、TMOS/1Cnを増加するとd値の増大が確認されたが、細孔径はTMOS/1Cnによらず一定であった。この結果は、TMOSの増加がシリカ細孔壁の厚みの増大に寄与したことを示唆している。また、出発分子のアルキル炭素数を変えると、n=16の系では細孔径は4.3nmであるのに対してn=10の系では3.8nmと小さくなることから、細孔径の制御が可能であることがわかった。
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