研究概要 |
本研究では、Ni-42,46,50at%Alの組成を有する金属間化合物の急冷凝固薄帯を作製し、薄帯中に凍結された過飽和空孔濃度の決定ならびに時効熱処理による過飽和空孔の自己組織化挙動の調査を行った。得られた急冷凝固薄帯のX線回折パターンを解析することによって、格子定数の精密化を行った。また各急冷凝固薄帯の密度を、定容積膨張法にて測定した。得られた格子定数と密度の値から、各組成の急冷凝固薄帯中に凍結された過飽和空孔の濃度を決定した。その結果、過飽和空孔濃度は明瞭な組成依存性を示すことがわかった。次いで、各組成の急冷凝固薄帯に対して973Kもしくは1073K、10時間の時効熱処理を行い、薄帯表面の形態の変化を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、N-42at%Alでは時効熱処理による表面形態の明瞭な変化は観察されなかったが、Ni-46at%AlとNi-50at%Alでは薄帯表面でナノスケールの微小なポアーの生成が確認された。ポアー密度は、Ni-46at%Alに比べてNi-50at%Alの方が明らかに高いが、いずれの場合も、時効温度の上昇によるポアー密度の顕著な変化は見られなかった。以上のことから、NiAl金属間化合物でも、FeAl金属間化合物同様、過飽和空孔の凝集によりナノポーラス表面が形成されることが明らかとなった。 そこでさらに本研究では、Ni-50at%Al金属間化合物の単結晶を用いて、1673Kからの急冷によって凍結された過飽和熱空孔の自己組織化挙動を調査した。その結果、NiAl金属間化合物の表面に生成するナノポアーは、晶壁面を{011}面としており、そのためFeAl金属間化合物とは異なるナノポーラス表面形態となることがわかった。また、NiAl金属間化合物でもFeAl金属間化合物同様、急冷温度、時効温度、時効時間によってポアーサイズ、密度等が変化することが明らかとなった。
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