研究概要 |
強磁性形状記憶合金は,強磁性と形状記憶効果の2つの機能を併せ持つ多機能材料であり,外部磁場で変位を制御できる高速応答型アクチュエータ材料への応用が期待される.本研究では,組成の異なる4種類のニッケル-マンガン-ガリウム合金ターゲットを用いてスパッタ膜を作製し,均質化熱処理後に拘束条件下で時効処理を施したものについて,形状記憶効果に及ぼす組成の影響を調査した. 得られたスパッタ膜の組成は,Ni_<51.4>Mn_<28.3>Ga_<20.3>,Ni_<54.4>Mn_<21.3>Ga_<24.3>,Ni_<55.2>Mn_<20.6>Ga_<24.2>,Ni_<56.6>Mn_<18.5>Ga_<24.9>であった.以後,拘束時効処理されたそれぞれのスパッタ膜を,各ニッケル組成を用いN51,N54,N55およびN57時効処理膜と呼ぶ.得られた時効処理膜のマルテンサイト変態温度およびキュリー温度は室温以上であった. これらの時効処理膜の加熱-冷却に伴う形状変化挙動を調査した結果,N51およびN54時効処理膜では1K当たりのひずみ変化量が大きく,N54時効処理膜では温度ヒステリシスが小さいことがわかった. また,各時効処理膜をマルテンサイト変態温度近傍で温度一定とし,0〜5Tの磁場を膜面に平行に印加-除去した結果,磁場制御による形状記憶効果が認められた.これは,主に磁気弾性型(磁場誘起)マルテンサイト変態に起因すると考えられる.1K当たりのひずみ変化量が大きく,温度ヒステリシスの小さなN54時効処理膜において,冷却過程で温度を保持した場合,磁場印加に伴い大きなひずみ変化が現れ,磁場除去においても形状変化が確認された.
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