研究概要 |
本研究では,実用的な低磁場で動作する強磁性形状記憶合金膜を開発するために,磁気的性質の向上が期待される強磁性元素であるFeを第4元素として添加したNi_2MnGa合金スパッタ膜を作製し,その結晶構造ならびに形状記憶効果に及ぼす磁場の影響を調査した.Fe添加Ni_2MnGa合金膜(膜厚:約5μm)は,Ni_<51>Mn_<26>Ga_<23>あるいはNi_<52>Mn_<26>Ga_<22>合金ターゲット(高周波スパッタ電力:200W)およびFeターゲット(直流スパッタ電力:0〜30W)を用いた2源同時スパッタ法により作製された.得られた膜のFe添加量は0〜9.3mol%であった.Fe添加膜のマルテンサイト変態温度はキュリー温度以下となり,強磁性の温度領域においてマルテンサイト変態を起こすことがわかった.形状記憶効果を発現させるために,基板から剥離したスパッタ膜に均質化熱処理(1073K-3.6ks)を施して平板状とした後,短冊状に切断したものを円筒状に曲げて拘束時効処理(673K-3.6ks)を施した.得られたFe添加膜はいずれも無添加膜と同様に,マルテンサイト変態とその逆変態により,温度変化に伴う可逆的な2方向形状記憶効果が発現した.また,磁場印加に伴いFe添加膜のひずみ-温度曲線は5Tの磁場印加に伴い高温側に約5K移動した.Ni_<50.4>Mn_<23.5>Ga_<20.0>Fe_<6.1>合金膜に対して強磁場中でX線回折を行った結果,磁場誘起マルテンサイト変態が生じることを直接的に確認した.さらに,温度一定下で1Tの磁場印加に伴うひずみ変化は,無添加膜では5Tの磁場印加の20%程度であったが,Fe添加膜では約40%と増大することがわかった.このことから,Fe添加により磁場誘起マルテンサイト変態が起こりやすくなり,低磁場でより大きな変形ひずみが得られることが示唆された.
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