研究概要 |
非平衡状態から平衡状態へ遷移する過程を利用して大変形を得る擬似的超塑性変形に関しては,Ti/Si系合金を用いて系統的に研究を行った.その結果,超塑性挙動に似た大変形が発現することが明らかとなった.さらに微視的構造解析,高温変形挙動を明らかにして,より低温度・低応力・高ひずみ速度変形を可能とする条件を与えるような組織制御研究が必要であることが確認された.これらの基礎的知見をもとに,立命館大学の放射光研究設備を活用し,LIGAプロセスと利用した精密成型に展開した. Ti-20mass%SiCの非平衡組織粉末をアモルファス相の結晶化以下の温度で成形後,種々の温度で圧縮変形すると,高温(1073K)よりも低温(973K)で低応力変形する挙動が確認された.この現象は,SPS材がより微細な結晶粒径を有することに原因があると考えられる.また,圧縮試験材料には変形中,変形後(約30%)のいずれにおいても転位の堆積やクラックの発生等は生じず,あたかも超塑性変形した材料のようなひずみのない等軸・微細な結晶粒組織を呈すること,ひずみ速度感受性指数m値が容易に0.3を超える条件が存在すること,このような現象は粉末のみの緻密化に起因するものではないこと,が確認されており,これより,この現象を「擬似的超塑性変形」と名付けた.この擬似的超塑性変形をMEMSなど超精密部材の成形へも展開するための基礎的知見を得ることを目的としている.その基礎的実験の成果として,LIGAプロセスと組み合わせたマイクロパーツを作製した. また,高融点で難加工性材料であるタングステンについてもミリングによるナノ結晶化について検討し,タングステンのナノ結晶組織制御を行うことにより,1473K(タングステンの融点のほぼ4割)においてひずみ速度感受性指数m値が0.4を示し,等軸粒組織が維持された超塑性変形が発現することを明らかにした.
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