研究概要 |
本年度は、難加工性材料の一つであるタングステン(W)の高温変形に着目した研究を行った。Wは金属中で最高の融点(3695K)を持つ元素であり,さらに高温における蒸気圧が小さい,機械的強度が高い,比重が非常に大きい(19.39/cm^3),およびガス放出がきわめて少ないといった特徴を生かし,照明用のフィラメントやワイヤ電極などを中心に利用されてきた,しかしながら,Wは高温用材料として非常に優れた特性を有しているが,難加工性が大きな問題となっている.研究成果を下記に記す。 (a)W粉末にメカニカルミリング(MM)を施した結果,結晶粒径10nm程度のナノ化を達成した. (b)Reを10mass%添加したW-10Reについては,高温においてRe添加による結晶粒成長の抑制が確認できた. (c)各焼結体の曲げ試験結果より,MMによる結晶粒微細化によって強度が向上した.特にW-10Re/MM粉末焼結体は純W粉末焼結体の約4倍の強度を持つことが明らかとなった. (d)各焼結体の高温圧縮試験結果より,MMおよびReの添加による圧縮率の上昇が確認できた.純W/MM粉末焼結体は1273Kという融点に比して著しく低い温度で変形能40%という大きな変形が確認できたが,変形中に大きく粒成長することが分かった.W-10R/MM粉末焼結体については,変形中の粒成長が抑制され,1573Kで変形能73%という非常に大きな変形が認められた. (e)W-10Re/MM粉末焼結体の1473Kにおける圧縮変形でのひずみ速度感受性指数m値は0.41であった.さらに変形後も転位がほとんど存在せず,等軸粒を維持していることより,超塑性により変形したことが明らかとなった。したがって、難加工性Wの超塑性加工の可能性を確認できた。 以上の成果は、学術論文だけでなく、学会報告等にも発表を行った。
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