研究概要 |
1.薄膜ノイズ抑制体の開発 1)GHz領域において優れた電磁波ノイズ抑制効果を有する軟磁性膜には、Hk,、Bs共に大きいことが要求される。CoにFeを置換するとBsは大きくなるが、Hkは小さくなる。Hkの減少を抑えるために、Ptを添加した(Co_<0.7>Fe_<0.3>)_<90>Al_<10>-Pt-O系膜を作製し、適当な大きさのHkを持つ軟磁性膜を得ることが出来た。この膜の代表的な特性はBs=14kG, Hk=100 Oe, p=165μΩcm, Hc=0.2 Oe,μ'=140,fr=3.4GHzである。2)より高周波帯域での応用を目指し、大きなHkを得るため、IrMn反強磁性体とFeCo強磁性体を適当な膜厚で組み合わせた交換結合膜を合成した。この多層膜の積層回数、膜厚を系統的に変化させた結果、IrMn(200Å)/FeCo(70Å)を40回積層した膜がHk=520 Oe、Bs=17kGそしてfr=6GHzの特性を示す。3)シート抵抗が100Ω近傍の膜が最大のノイズ抑制効果を示すので、膜厚1μmの軟磁性薄膜が良好なノイズ抑制効果を示すためには、膜は約10^4μΩcmの電気比抵抗を有することが望ましい。そこで、Co-Pd-B-O膜を系統的に検討した結果、広い組成範囲で高電気比抵抗かつ高Bsの軟磁性膜が得られた。そのノイズ抑制効果は周波数と共に増大し、2GHz付近から6GHzまでの帯域で良好な値を示す。 2.大きなノイズ抑制効果のシミュレーション シート抵抗とノイズ抑制効果の関係を明らかにするために、電磁界シミュレータを用いて計算を開始した。ノイズ抑制効果には渦電流損失が関与していることを見出した。 3.LSI上への成膜 市販の高周波電子デバイス上に当該薄膜を直接成膜し、実質的な有効性の確認実験を開始した。そのための低温成膜には対向ターゲット型スパッタ装置が最も適していることを見出した。
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