研究概要 |
まず,リン酸塩含有高温グリセリン溶液中では,チタンのアノード酸化皮膜の溶解速度が大きく,厚い多孔質皮膜を生成することは容易でないことが明らかとなった。そこで,基礎的知見を蓄積する目的でアルミニウムを用いて、リン酸塩濃度,電解液の酸塩基性,生成電圧,アノード酸化時間がアノード酸化皮膜の多孔質構造にどのように影響するかを検討した。多孔質皮膜は酸性水溶液中と同じようなセル構造を持ち,そのサイズは生成電圧に依存すること,K_3PO_4を含む塩基性の電解液ほど酸化膜の溶解が激しいこと,さらにリン酸濃度の上昇も酸化皮膜の溶解を促進する。この電解液の特徴として,リン酸アニオンの皮膜内への封入量がかなり少ないことが挙げられる。 誘電体バリアー型アノード酸化皮膜に関しては,最も少ない添加量でチタンアノード酸化皮膜の結晶化を抑制できるシリコン添加の添加量の影響について検討を行った。シリコンを6at%以上添加すると結晶化は抑制できるが,添加量の増大とともに酸化皮膜の電気容量は大きく減少する。これは皮膜厚さの減少以上にシリコンが皮膜に封入されることによる誘電率の低下が大きいためであることがわかった。 チタンアノード酸化皮膜の結晶化についての理解を深めるために,ニオブアノード酸化皮膜の結晶化について詳細に検討を行った。アノード酸化前に存在する大気酸化皮膜が結晶性酸化物の核発生サイトとなること,核発生サイトとなる領域に異種元素種を導入すると結晶化や抑制されること,素地のラフネスの増大は結晶化を抑制する効果があるなど非常に興味ある知見が得られた。 β-チタン合金の火花放電アノード酸化により,この合金の耐摩耗性を大幅に改善できるコーティングにも成功した。
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