研究概要 |
1.摩耗試験装置の改良 CO_2およびO_2ガス分圧制御可能なインキュベータ内(310K飽和水蒸気雰囲気)で稼働する雰囲気制御Pin-on-Disk型回転摩耗試験器を設計・作製した。予備実験の結果、駆動系からの発熱により使用時間は2時間程度に制限されることがわかった。 2.チタン系材料の摩耗試験 既存の非消耗型電極アルゴンアーク溶解炉を用いて、実用α+β型チタン合金(Ti-6Al-4V,Ti-6Al-7Nb)および当グループで開発した冷間加工性に優れた新β型チタン合金(Ti-14Mo-3Nb-1.5Zr)を溶製した。これらの加え、工業用純チタン(α型,CP Ti)を試料として、Hanks溶液および1mass%乳酸中でのPin-on-Disk型回転摩耗試験を行った。PinおよびDiskには同一種の材料を用いた。β型のTi-14Mo-3Nb-1.5Zrにおいて耐摩耗性の指標となるwear lossがCP Ti, Ti-6Al-4VやTi-6Al-7Nbよりも大きいことが判明した。この原因はヤング率が小さいβ型合金においては付着摩耗が顕著なためと考察したが、詳細は次年度における課題である。1mass%乳酸中における摩耗試験においては、合金組成比に対応したイオン溶出が観察された。一方、Hanks溶液中における溶出イオン濃度はICPの検出限界以下であった。 3.表面硬化処理の影響 ガス法による表面硬化処理を施したβ型Ti-14Mo-3Nb-1.5Zrのwear lossは、未処理材でのものと比較してその値は減少しており、耐摩耗性の向上が確認された。 4.細胞毒性評価 β型Ti-14Mo-3Nb-1.5Zrを含め種々のチタン合金に関してL929を使用した細胞毒性試験を行い、チタン合金の優れた生体適合性を確認した。また予備実験としてマクロファージ系RAW264と市販のチタン粒子との反応を調べ、チタン粒子が貪食されることを確認した。実験中にチタン粒子が凝集するという問題点が明らかとなり、次年度における課題と思われる。
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