研究概要 |
平成17年度は,選択的運動量制御の運転パラメータ範囲を把握するために,ロードロック室を含めた実験装置の追改造と動重力効果の検証範囲を観察してきた. (1)プラズマ源の交換 昨年度は誘導結合型プラズマ(ICP)を用いて,酸素イオンの動重力効果を観察してきたが,動重力区間に入射するイオンの初期速度が大きいために,明瞭なフラックスの現象が再現良く観察されなかった.初期速度は電子温度に依存するので,電子温度の低減を狙い電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマを既設のプロセス装置に組込み,基礎特性と動重力効果の観察を行った. 10^<-2>Pa前半の真空度及び0.1Tの磁場空間において,通常のICPでは10eV程度まで上昇するのに対し,本研究のECRプラズマでは,磁力線に沿って4eV程度の低い電子温度が得られた. (2)プラズマイオンへの動重力効果 動重力発生アンテナに印加する電圧の周波数を変化させると酸素分子イオンのフラックスがそのイオンのサイクロトロン周波数を越えたあたりで減少することを明瞭に再現良く観測した.フラックス極小値の周波数f_<min>は,ビーム理論から予測される値とほぼ一致していることからこの結果は動重力効果に起因すると考えられる.また,f_<min>の質量(他に粒子種Ar)依存性も確証している. f_<min>の各パラメータ(磁場強度など)依存性を確証するには,円柱状プラズマ,静磁場,動重力発生アンテナ,及びイオン入射オリフィスの軸合せが必須であり,軸上に配置できる試料の交換時間を短縮したロードロック室の改良も含めて装置の改造を主に行ってきた. 選択的運動量制御の運転パラメータ範囲は,10^<-2>Pa前半のガス圧力が最適であることを実験的に確かめた.これは,サイクロトロン軌道の確保と電子温度の低減というトレードオフの観点から,理論的に予測された範囲を現している.
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