研究概要 |
平成18年度は選択的運動量制御に必要な動重力を増強するために,ECR酸素プラズマ源と動重力アンテナの改良を行い,基板入射するイオンのフラックスを観察してきた. (1)ECR酸素プラズマ源の改良 マイクロ波真空窓とオリフィス円板の間で高エネルギー電子を静電的に閉じ込め,かつ,共鳴領域を多重に通過させECRにより磁力線に垂直方向の速度成分を増加することにより,電子-中性粒子間衝突の実効的な平均自由行程を短くして,低気圧でも径方向の衝突拡散を促す放電構造を構築した.プラズマ発生時に形成される径方向の電位差は,プラズマ周辺部に飛び出る電子を減速させる.マイクロ波の電場はプラズマのカットオフ効果により導波管終端部の下流プラズマまで漏れでないため,外部電場がない空間に溜まるこれらの電子は強く磁化されオリフィス円板を通過して試料基板まで導かれる.この結果,オリフィス円板と試料基板間dに形成されるプラズマ柱の電子温度T_<e||>(磁力線方向のエネルギー平均)は,10^<-2> Pa台前半の低気圧雰囲気においても高エネルギー電子のビーム成分を含まず1eV以下となった.この圧力で酸素イオンと酸素分子との平均自由行程はdより大きいため,イオンのサイクロトロン軌道の乱れは少ない. (2)アンテナ電場分布測定と動重力増強の観察 円柱状真空容器に対し湾曲アンテナ電極を同軸構造で配置した.半径方向の電極間隔を変えて高周波電場の減衰特性長Lを算出した.Lが大きくなるにつれ,試料基板に飛来する酸素正イオンのフラックスが減少する傾向が観察された. 以上(1)と(2)を繰り返し行い,T_<e||>の更なる低下とLの増加により,動重力が増強されたと判断されるデータが出始めた.
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