研究概要 |
主に0.2%炭素鋼のフェライト(α)組織微細化に伴うスーパーファイン機能の向上を目指し,1パス超強加工法である押出し加工に関する調査を行っている.本年度では,最大平均歪み3,最大平均歪み速度50[1/s]の押出し加工において,γ静的再結晶を最低限に抑える700℃までの低温熱間加工およびそれ以下の600℃温間加工について,内部組織変化観察(光学観察・EBSP観測)と共に,その微細粒鉄鋼素形材の引張試験および冷間圧縮試験を行い,機械的特性および冷間鍛造性を調査した. 1100℃から700℃へ加工温度を下げることに伴い,初期α平均粒径17μmのS20C(JIS規格材)が平均粒径7μmから1μmへ順々に微細化が進展した.中でも加工温度700℃においては平均粒径1μm近傍の大角粒界(方位差15°以上)に囲まれた等軸微細α組織が得られた.一方,600℃加工においては1μm強の微細な組織が得られるものの,粒内転位が残存することや小角粒界(方位差5〜15°)が多く含まれる一般的な温間加工に類似した組織であった. 押出し微細粒鋼の引張試験結果は,素材焼鈍材がTS(引張強度・真応力):500MPa,EL(均一伸び・真歪み):18%であったの対し,800℃加工材までにTS:700MPa,EL:9〜11%と,ELを落としながら高強度化が進展した.さらに,700℃加工材ではTS:700MPaを保ちつつELを最高16%に伸ばした.これは,α変態までの時間が極めて短いために,α粒界付近に点在するパーライト組織までもが微細化および離散化されたことによるものであると考えられる.600℃加工材ではTS:650MPa,EL:8%と機械的特性の低下が確認された. 80%大圧下の冷間圧縮試験においても,ファインな機械的特性をもつ押出し微細粒鋼について加工硬化が見られ,良好な冷間鍛造性が確認された.
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