本研究では、1パス超強加工として、1パスで90%以上の圧下を与えることができる、ガラスを潤滑材とした押出しに着目する。1パス超強加工である押出しによるスーパーファイン機能創成の研究は過去に無い。スーパーファイン機能とは、構造材料については高い機械的特性を意味する。強度、伸び、じん性などの機械的特性は内部構造敏感な性質である。そこで、スーパーファインな内部構造を、超強加工を利用して一発創成し、機械的特性を改善あるいは制御できることを明らかにした。具体的な研究項目としては、中炭素鋼を対象とし、結晶粒径2ミクロン以下(400MPa級ベース組成でTSは700MPa以上)、伸びが25%以上ある素材を、断面直径5mm以上のサイズで、連続的に製造・加工できる条件を実験・理論の両面からの検討によりにし、さらに内部組織の形態について詳細な検討を加えた。さらに、スーパーファイン機能を持つ金属粉末ベースの複合材料の一発創成に、1パス超強加工を展開した。具体的には、ミクロサイズのアルミ合金A6061粉末を基材とし、ナノサイズのカーボンナノチューブ(CNT)を均一分散させた素材を1パス超強加エすることで、CNTを1.0wt%以上含有するA6061系複合材料を創成した。温間温度域での超強加工を利用することで焼結→圧粉加工を一気に行うことができ、そのため、稠密で機械的特性が優れ、なおかつ、含有するCNTの特性を損なうことが無い金属系複合材料の創成が可能となった。尚、金属系CNT複合材料の製造は、このことは世界に先駆けて行われた研究である。機能としては、優れた耐摩耗性、導電性、水素吸蔵製などが考えられるが、本研究では、導電性について検証し、A6061と比較して25%程度向上することを確かめた。
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