研究概要 |
本研究では、次世代の鉄鋼材料をインターフェーシングによる粒子高密度複合型の観点から検討している。初年度のH16年度は、固液界面である溶鋼-酸化物界面、および固固界面である鋼-酸化物界面のそれぞれの界面反応を検討し、以下の研究成果を得た。 (1)鋼中に酸化物粒子を高密度に分散する溶融プロセスの実現に向けて、溶鋼とAl_2O_3、MgOとの濡れ性に及ぼす鋼の添加元素の影響を平板酸化物上の溶鋼滴の濡れ角測定(静滴法)から検討した。その結果、Ti添加によりいずれの酸化物との濡れ性も改善される一方、Al, Nb, Mnでは改善が認められなかった。濡れ性の向上は、溶鋼-酸化物界面での反応エネルギーよりむしろ、界面で反応生成した中間層TiOが、トータルの界面エネルギーを下げることに起因すると考えられた。この知見を基に、Ti添加溶鋼中でのAl_2O_3粒子分散実験を行った結果、粒子表面は溶鋼中でin-situ改質され、分散性が向上する結果が得られた。 (2)酸化物を核とした微細変態組織の実現に向けて、酸化物の変態組織(フェライト)生成能を、鋼表面に酸化物薄膜を蒸着し、それに熱サイクルを付与する実験から検討した。その結果、TiOはMgO, CaO, Al_2O_3、いずれよりもフェライト生成能が高く、分散粒子としての有効性が示された。フェライト生成はTiOとの良好な格子整合性が支配的に作用しているが、同時に陽イオン空孔を有するTiOによって吸収され生じるTiO/酸化物界面のMn欠乏もこれをアシストしていることが明らかとなった。
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