研究課題
基盤研究(B)
粒子高密度複合型鉄鋼材料の実現に向けて、(1)液相プロセスからの酸化物粒子分散を可能にする溶鋼-酸化物濡れ性の向上技術、(2)分散粒子による結晶粒微細化の定量的指針を与える組織形成シミュレーション(3)分散粒子を核とした微細変態組織形成を可能にする酸化物/鋼界面からの相変態挙動の解明、の3課題に取り組んだ。(1)では、静適法を用い酸化物基盤と溶鋼滴との濡れ角測定から界面濡れ性に及ぼす酸化物種と溶鋼組成の影響を調査し、溶鋼中強脱酸元素による酸化物界面での還元・置換反応が濡れ性を大きく向上することを明らかとした。特に溶鋼との濡れが悪いAl203分散系へのTi添加の有効性を示し、鋼/酸化物界面でのナノレベルのTiリッチ酸化層形成が界面エネルギーを大きく低減することを初めて示した。また(2)では、伝熱、拡散を差分法で解析しながら、結晶粒成長をモンテカルロシミュレーションで解析するハイブリッド型の組織形成シミュレーターを開発し、溶接などの様々な熱履歴の中で結晶粒成長に及ぼす分散粒子のピン止め効果、分散粒子の溶解に伴うピン止め力の変化、などを定量的に予測できる技術を確立した。また、このシミュレーションから、粒子ピン止め力は修正Zener型の(r/√<f>)に従うことが明らかにした。(3)の酸化物/鋼界面からの相変態挙動の検討では、酸化物/鋼界面のモデル化のために、鋼表面に電子ビーム蒸着で約1μmの酸化物薄膜を蒸着し、それに溶接相当の熱サイクルを付与し冷却中の各種酸化物と鋼との界面からのγ→α(フェライト)変態を定量的に評価した。その結果、TiOおよびMgOのNaCl型酸化物からは優先的なフェライト生成が確認されたが、同結晶構造でもそれより格子乗数が大きいCaOならびにhexagonalなど他の結晶構造系の酸化物からは鋼の相変態が起こらないのが判明した。この相変態促進機構として界面での格子ミスフィットの影響、界面組成の影響を明らかとし、粒子高密度複合型の鉄鋼材料の創成に向けた基礎知見が得られた。
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鉄と鋼 Vol.92 No.7
ページ: 411-416
Trends in Welding Research, S. David et al. eds., ASM International, Materials Park, OH (掲載予定)
Testu-to-Hagane Vol.92, No.7
Materials Science and Technology Vol.21 No.8
ページ: 867-879