研究概要 |
本研究は,化学環境下に置かれた樹脂中への酸およびアルカリ水溶液の浸入を検知するセンサーを開発することを目的としている. 本年度は,持ち運びできる小型分光光度計を用いた測定実験を行い,水酸化ナトリウム水溶液のフェノールフタレイン(変色域pH=8.2〜10.0)による変色について据付け式の分析用分光光度計と同等の結果を得ることができた.これにより,実機での浸入検知をより簡便に行える可能性を明らかにすることができた. また,酸環境下に置かれたアミン硬化系エポキシ樹脂中への酸の浸入について,種々のpH指示薬による検出を試みた. 具体的には,まずpH指示薬としてはBPB(変色域pH=2.8〜4.4),メチルレッド(変色域pH=4.4〜6.2),およびメチルオレンジ(変色域pH=3.1〜4.4)をとりあげた.酸環境としては,無機酸として10wt%の硫酸,有機酸として0.5mol/lのクロロ酢酸を用いた.指示薬の変色と樹脂自体の色との干渉を防ぐため,浸せき前後いずれにおいても樹脂自体の色が薄いビスフェノールA型アミン硬化系エポキシ樹脂を用い,各指示薬を添加して酸環境に暴露したところ,硫酸環境では,BPB添加樹脂は青色から黄色へ変色し,メチルレッド添加樹脂は黄色から赤色へ変色した.メチルオレンジはメチルレッドと同様の結果を示した上,変色域がメチルレッドよりも酸性寄りであるため除外した.また樹脂内部は硬化剤のアミンによってアルカリ性になっているため,弱酸である有機酸の浸入では指示薬の変色域まで達せず,明瞭な変色は確認できなかった.
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