研究概要 |
酸化皮膜の破壊・剥離や機能性は皮膜中のボイドなどの皮膜組織に大きく依存することから,本年度は酸化皮膜の組織形成過程について,定量的研究を行った。 (1)2層皮膜中の化学ポテンシャル分布およびイオン流束の計算法の確立と内層/外層界面におけるボイド形成の定量的予測 Fe-5Cr合金の高温酸化を823Kで行った。(Fe,Cr)_3O_4スピネルの内層とマグネタイトFe_3O_4の外層が形成した。低酸素分圧の酸化では内層/外層界面にのみボイドの発生が認められた。高酸素分圧の酸化では,内層/外層界面および外層中にボイドが形成した。昨年までに開発した計算手法を拡張して,皮膜中の化学ポテンシャル分布,イオン流束およびその発散を求め,実際の組織と比較したところ,ボイドの発生する位置および量を定量的に説明することができた。 (2)外部電流印加時における化学ポテンシャル分布およびイオン流束 固体酸化物高温燃料電池の合金インタコネクトでは外部電流が流れる状況で高温酸化が起こっている。この場合は酸素の化学ポテンシャルに加え,外部からの電圧が酸化の駆動力となる。この場合の電場に影響された化学ポテンシャル分布を求める手法を開発した。また,電流印加時のカソードおよびアノードにおけるCr_2O_3皮膜の成長を解析し,両極における皮膜成長挙動を予測できることを明らかにした。
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