研究概要 |
樹脂基カーボンナノチューブの樹脂複合材料としての機械的,電気的,熱的基礎特性を明らかにして,その混練及び射出成形による成形プロセスを確立することにより,従来にない高強度材料,高導電性材料及び高熱伝導材料の開発に資することを目的として研究を遂行し,今年度以下の結果を得た. 1.CNT単体及び複合材料のナノ材料試験 超高圧透過型電子顕微鏡(TEM)中でCNTを変形させながら変位と力をモニタリングするナノ材料試験法を確立し,種々のCNT単体の曲げ試験を行うことにより,結晶の完全性の高いCNTは1〜3TPaのヤング率を有し,完全性の低いものでは10GPaと2桁も小さくなり事を明らかにした.さらに,結晶の完全性をラマン分光分析のID/IGのピーク比で整理し,この値により機械的特性も見積もりが可能であることを明らかにした.さらに,複合材料のナノ引張り試験を行い,CNT表面をDLCコーティングした上でアミノ基修飾することによCNTが樹脂から抜け落ちるのを防止できることを明らかにした. 2.CNTの表面処理法の開発 CNT表面に,アセチレンを原料としたプラズマCVD法によりDLC膜を合成することを試み,詳細に観察を行ってDLC膜が数十nmコーティングされていることを確認した.さらにその表面のアミノ基修飾を行った.まず,硫酸・硝酸の混酸中でCNTを30分〜120分程度熱した後にアミノ化処理した.そして,処理後のCNTを,各樹脂中に二軸混練機により混練して複合材料を作製し,射出成形により試験片を作製して引張り試験を行った.その結果,アミノ基修飾により高い界面接着強度が得られ,ポリプロピレン(PP)樹脂の場合引張強度のCNT含有率に対する上昇率が2倍以上に向上することを確認した.
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