研究概要 |
本研究は,波長可変レーザによる光電効果を利用してアーク作動中タングステン電極の実効仕事関数を測定すると同時に,作動中の陰極表面をマクロからミクロまで観察することにより,多方面からプラズマ・陰極系をin-situに診断・解析することを目的としたものである。 本年度は波長可変レーザによる光電効果を利用したアーク作動中タングステン電極の実効仕事関数を測定することに重点を置き,同時にデジタルマイクロスコープを導入して作動中のタングステン電極表面の静的な様子を高解像度に観察する試みを開始した.なお,実効仕事関数の測定には物質の仕事関数の測定手法として古くから実績のあるFowlerプロット法を応用した.具体的には,可視から紫外にわたる波長可変レーザを作動中のタングステン電極表面に照射し,単位時間あたりに電極に吸収された光子の数Sと,それに伴い光電効果によって単位時間あたりに電極から放出された電子の数Nとの比である光電子利得Yを実験的に求め,その実験プロット値に対してFowlerの理論式をフィッティングさせることにより,実効仕事関数を導出することに成功した.その結果,アーク電流200Aの条件において,W電極,2%ThO_2-W電極および2%La_2O_3-W電極の各実効仕事関数がそれぞれ4.5eV,2.7eV,3.1eVと導出された.これらの値を文献値(Wの場合は4.52eV, ThO_2の場合は2.65eV, La_2O_3の場合は3.13eV)と比較した結果,双方とも極めてよく一致していることが明らかになった.以上より,エネルギー入力が大きく十分に熱的に満たされた場合には,タングステン電極と言えども,その仕事関数は電極物質あるいは添加エミッターの仕事関数に一致することが結論づけられた.
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