研究概要 |
VO^<2+>を含む硫酸酸性の水溶液からZn-Vの複合電析を行なった。電析物中のV元素の含有率は,電流密度,浴のpH,有機添加剤の有無により変化した。電流密度1〜50A/dm^2の領域では,電流密度が低くなるほどV元素の含有率は高くなり,50A/dm^2では最大20mass%共析することがわかった。また,浴のpHを高くすると,電析物中のV元素の含有率は増加した。電解中,陰極界面では,水素析出のためpHが上昇し,VO^<2+>が加水分解してV酸化物が形成される。電流密度が高くなるほど,また浴のpHが高いほど,VO^<2+>が加水分解し易いため,電析物中のV元素の含有率は増加したと考えられる。電析物中のV元素の含有率を増加させる目的で,亜鉛および水素の析出を抑制することが分かっている第四級アンモニウム塩の塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウムを浴中に添加したところ,V元素の含有率は逆に低下した。これは,V元素の析出サイトをこの添加剤が封鎖したためと推察される。ESCAにより,電析物中のV元素はV_2O_3の酸化物として存在していることが確認された。Zn-V_2O_3複合膜の耐食性を分極曲線により評価した。Zn-V_2O_3複合膜の腐食V酸化物は,V含有率が増えるにしたがって低下しており,V元素が含有されるとZn膜の耐食性は向上することがわかった。一方,Zn-V_2O_3複合膜の腐食電位は,V含有率5%までは,V含有率が高くなるほど貴な方に移行したが,5%以上では逆にV含有率が高くなるほど卑な方に移行した。Zn-V_2O_3複合膜のアノード分極曲線では,二つのピークが認められ,複雑な溶解挙動を示した。
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