研究概要 |
Zn^<2+>,VO^<2+>を含む硫酸酸性の水溶液からZn-Vの複合電析を行なった。Zn-V複合電析における全分極曲線は,pH0の溶液で大きく復極していたがpH1〜3では大きな差は見られなかった。pH0での復極は水素の析出によるものと考えられるが,電解液中のVO^<2+>がV^<3+>,V^<2+>へ還元される反応も含まれている可能性がある。VO^<2+>を含む場合と含まない場合を比較すると,VO^<2+>を含む場合により大きく分極していた。この分極は,陰極面に形成されるV酸化物による皮膜抵抗のためと考えられる。このV酸化物によりZn電析の電荷移動過電圧が増加していることも考えられる。Zn-V電析膜の表面形態は,V含有率により大きく変化した。Zn-5mass%Vでは,Znの板状結晶が大きく成長しており,その板状結晶のエッジ部に白い析出物が認められた。この白い析出物はEPMAによりV酸化物であることが確認された。一方,Zn-20mass%Vでは,Znの板状結晶とは別にV酸化物である黒い球状の結晶が塊となって所々に存在しており,また深いクラックがあることも分かった。電析膜のZnの結晶配向性は,V酸化物が共析しない電析条件下では(0001)の基底面に優先配向しているが,V酸化物が共析する条件下では(1122)面への優先配向へと変化した。共析したV酸化物が電析Zn(0001)面の沿面成長を抑制していることが考えられる。電解液を攪拌すると,電析膜中のV酸化物の含有率は低下したが,膜中のV酸化物の分布状態は改善され無攪拌の場合より若干均一になった。Zn-V複合膜の耐食性を3mass%NaCl水溶液中での分極曲線により評価した。Zn-V複合膜の腐食電流密度は,電解液を攪拌しながら電析を行った場合,低下した。電析膜のV酸化物の分布状態が腐食電流密度に影響を及ぼしていると考えられる。
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